食物アレルギーとは?
特定の食べ物によって引き起こされるアレルギーを、食物アレルギーと呼びます。
皮膚、呼吸器、消化器などにさまざまな症状をもたらします。
3歳頃までによく見られる食物アレルギーの原因として、卵白、牛乳、小麦が挙げられますが、年齢を重ねるにつれて食べられるようになるケースが多いことも知っておきましょう。
食物アレルギーの症状は?
- 蕁麻疹、湿疹
- 皮膚のかゆみ、赤み
- 唇、舌、口の粘膜の腫れ
- 強い腹痛
- 吐き気、嘔吐
- 咳、呼吸困難
- ゼイゼイ、ヒューヒューという呼吸音
- 全身の倦怠感
- 血圧低下
- 失禁
- 不安、意識障害
- アナフィラキシー
症状にタイプがある
アレルギー症状が現れるまでの時間には、タイプによって差があります。
特に「即時型」は、命にかかわるアナフィラキシーショックを起こす割合も高いため、注意が必要です。
即時型
食べてから数分~30分のあいだ、遅くとも2時間以内に症状が現れるタイプ。
遅発型
食べてから6~8時間後に症状が現れるタイプ。
遅延型
食べてから1~2日後に症状が現れるタイプ。
卵?牛乳?このような食べ物が食物アレルギーを起こしやすい
0~2歳
卵、乳製品が全体の5~7割を占めます。次いで、小麦、ソバ、魚卵が挙げられます。
3~6歳
卵、乳製品が全体の4~5割を占めます。次いで、エビやカニといった甲殻類、小麦、ソバ、魚卵、ピーナッツが挙げられます。
7歳以上
甲殻類、卵、小麦、ソバ、果物、魚などが挙げられます。
食物アレルギーの検査・診断
血液検査によって、スクリーニング(アレルギーが疑わしい方を見つける検査)を行います。
血液検査では、アレルゲンに働きかけるIgE抗体の有無を調べます。
最終的には食物経口負荷試験を行います
スクリーニング後、最終的な診断のためには、実際にその食品を口にしてその症状の確認を行う「食物経口負荷試験」が必要です。
食物経口負荷試験は、日本小児アレルギー学会のガイドラインでも、もっとも信頼性の高い検査方法と認められています。
事前に病歴、基礎疾患、合併症、他検査結果を確認した上で、アナフィラキシーショックに十分に注意しながら検査を行います。
※食物経口負荷検査は、複数の医師がいないと実施することが出来ないため、当院では行うことが出来ません。食物経口負荷検査を行う際は、検査可能な病院を紹介させて頂きます。
<提携病院>
兵庫県立尼崎総合医療センター
兵庫医科大学
食物アレルギーの治療
食物経口負荷試験によって明らかになった食物を除去します。除去とは、その食べ物を食べないということです。
栄養バランスを維持するため、除去した食べ物に代わる食品を選別し、意識して摂ってもらうようにします。
なお、3歳頃までの食物アレルギーは、その後の改善が大きく期待できます。医師と相談しながら半年~1年に一度、食物経口負荷試験の再検査を行うことをおすすめします。
口腔アレルギー症状群:OAS(花粉食物アレルギー症候群:PFAS)
花粉症のある人が、下記に示す花粉のアレルゲンと交差反応する野菜・果物を加熱していない状態で摂取した時に、口腔内粘膜で起こるアレルギー反応のことです。
殆ど軽症ですが、まれにアナフィラキシーを起こします。
例えば、スギ・ヒノキと トマトの分子レベルでの型が似ており、トマトを食べることで、スギやヒノキの抗原が入ってきたと自分の体が勘違いして症状が起こってしまいます。
出典:初めの一歩は絵で学ぶ 免疫学 より一部改変
出典:鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症-2020年版(改訂第9版):表38(一部改変), P102, 2020
出典:https://www.thermofisher.com/diagnostic-education/patient/jp/ja/special-allergies.html#03
(サーモフィッシャーダイアグノスティックス株式会社HP)
野菜や果物は加熱することで問題なく摂取できる様になることが多いです。
他にもこんなOAEが知られています。
アレルギーの種類 ひきおこすもの
アレルギーの種類 | ひきおこすもの |
---|---|
ラテックスアレルギー(ゴム風船 長靴・昔のゴム手袋) | アボガド・キウイ・クリ・バナナ ラテックスフルーツ症候群 |
カバノキ花粉 | 豆乳 大豆はOKだが豆乳はダメな人 |
納豆アレルギー | クラゲ、サーファーに多い |
サーファーやダイバーなど海に関係のある人の8割に納豆アレルギーがあると言われています。クラゲに繰り返し刺されることで、クラゲの触手からポリガンマグルタミン酸が作られます。この刺激でポリグルタミン酸のアレルギーになります。納豆のネバネバにこのポリグルタミン酸が含まれているため、アレルギー反応を引き起こします。
仮性アレルゲン
食品自体にアレルギーと同じ症状を引き起こす化学物質(ヒスタミン・セロトニン・アセチルコリンなど)が原因で、アレルギーそっくりの反応が出ることを言います。
これは食物アレルギーとは違い、誰でも起こすことがあります。
引き起こす化学物質と症状 含まれている食べ物
引き起こす化学物質と症状 | 含まれている食べ物 |
---|---|
セロトニン(血管平滑筋収縮) | キウイ・バナナ・パイナップル・トマトなど |
アセチルコリン(喘息・自律神経失調・痒み | トマト・山芋・ナス・タケノコ・里芋・クワイなど |
ヒスタミン(痒み・蕁麻疹) | トマト・チーズ・里芋・とうもろこし・蕎麦・たけのこ・ほうれん草・ナス・エノキ・牛肉・馬肉など |
アミン(アレルギーを悪化) | カレイ・スズキ・タラ・タコ・ハマグリ・アサリ・カニ・エビなど |
例えば、山芋で口周りが赤くなるなどがあります。
食物アレルギー発症を予防しよう
食べることで予防
まず、小さなお子さんのアレルゲンとなり得る食べ物(卵、牛乳、小麦など)を妊娠中、授乳中、または離乳食の時期に避けたり食べるのを控えたりすることは、食物アレルギーの予防にはならず、むしろ逆効果であることを知っておいてください。
離乳食を開始する生後6カ月頃からは、適度に卵、牛乳、小麦などを食べるようにしましょう。
スキンケアで予防
乳幼児の食物アレルギーは、湿疹から発症するということが分かっています。
湿疹に伴うかゆみから、皮膚をかいたりすると、バリア機能が低下し、アレルギーを発症しやすくなります。赤ちゃんの湿疹予防のための保湿、また湿疹が起こったときには早期の治療を行うことで、食物アレルギーの予防が可能です。
食物アレルギーQ&A
どんな症状が出ますか?
一番多いのは、蕁麻疹や湿疹といった皮膚症状です。口の周りが少し赤くなる・ブツブツが出る、というものから、全身が赤くなったり、急に咳き込んだり、息苦しくなるまで食べたものや量や患者さんのアレルギーの程度によってさまざまです。
食べた直後に出る場合もあれば、何時間も経過してからかゆみが出てくるときもあります。
食べた後に嘔吐や下痢という消化器症状もあります。
口の中がイガイガする、のどや舌がピリピリする、気持ち悪い場合は口腔粘膜症状で、果物のアレルギーのときによくあります。
このようなアレルギー症状が様々なところに急速に起こると、アナフィラキシーという非常に危険な状態になります。
急速に血管から水分が失われ、血圧が下がり、ショック状態を起こすケースがあり、アナフィラキシーショックという命にかかわる状態です。意識が遠のいているときには、血圧が低下している状態ですので、ただちに救急車を呼び、医療機関へ行ってください。
食物によって現れるアレルギー症状は異なるのでしょうか?
アレルギーの原因となる食物は人によって異なり、同じ人でも年齢によって食べられるようになったり、新たに原因となる食物が増えたりする場合もあります。また、同じ人が同じものと食べても体調によってアレルギー反応が違うことも多々あります。
年齢、検査数値によっても違います。アレルギー検査値が同じでも、アレルゲン食物を食べられる人もあれば、アナフィラキシーを起こす人もあります。
アレルギースコアでクラス6でも症状がほとんど出ない人もいれば、クラス0でもブツブツが出てしまうこともあります。
アレルギーが怖くて、卵や牛乳をいつから与えるか悩んでいます。与える前にアレルギー検査を受けることも可能なのでしょうか?
アレルギー検査は、ブツブツやゼーゼーなど症状が出てきてから検査されることをお勧めします。
症状が出る前に検査をし、例えばある特定の食べ物で反応が出ていたら、怖がって食べさせないご家族が増えてしまい本当は大丈夫なのに食べられないという状況を作ってしまいがちです。アレルギースコアのクラスが高くてもなんともない子もいます。
アレルギーの原因として食べ物または吸入がある程度特定がついてきた段階(1歳過ぎ)が、検査をお勧めする時期です。